紫陽花のおはなし

梅雨空のなか、雨に濡れた紫陽花の葉の上には小さな蝸牛。

6月の花といえば、そんな情景を思い出す人も多いことでしょう。

これから旬を迎える紫陽花は日本にルーツがある花です。ご存じでしたか?

額紫陽花(がくあじさい)や山紫陽花など、日本が原産地であり、日本らしい花のひとつなのです。


そして、紫陽花といえば、江戸時代にオランダ政府から日本に派遣されてやってきた医師のシーボルト。彼は大変な植物好きで、日本や東アジアにしかない植物をたくさん採集してオランダに持ち帰りました。もちろん、紫陽花もそのなかのひとつ。彼は手毬咲きの紫陽花を持ち帰ったのです。シーボルトは、とてもこの紫陽花を気に入り、日本人の妻であるお滝さんの名前から、紫陽花の学名をオタクサ(お滝さんとうまく発音できず、おたくさと呼んでいたことが由来とか)と命名したほど。

欧州に届いた日本の紫陽花は、その美しさ、愛らしさ、珍しさが感動を呼び、現地で品種交配が重ねられ、さまざまな色や大きさの品種が誕生しました。そして、日本へ西洋紫陽花という名前で帰ってきたのです。

切り花では、千葉県南房総市の青木園芸さんが20年ほど前から栽培をはじめ、いまでは日本最大規模で生産しています。6月の旬の時季には瑞々しい花色のフレッシュ、7月に入り咲きはじめから時間が経ちグリーンが少しのってきたものをアンティーク、8月から秋にかけて緑のうえに赤みがのってきたものをオータムと、紫陽花の色の変化を独自の基準で区分しています。色が美しいだけでなく、花も大きく、1本でも十分楽しめる存在感。紫陽花のルーツを知ると、ずいぶん大きく立派になって帰ってきたね、と思わずにはいられません。海外でも日本のバラと呼ばれるほど、熱狂的に愛されている紫陽花。これからの季節、旬の花としてどうぞお楽しみください。

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